更新履歴

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【  2012年11月  】 

第三章(8)

第三章

2012.11.25 (Sun)

ヴァラールの屋敷は、主の出陣後、年老いた家令が守っていた。太い杭の植えられた砦柵〔さいさく〕には一本のゆるみもなく、空掘は深く、四つの矩形〔くけい〕の塔が石積みの城壁をつなぐ。 居城も四角い石造りでいかめしい雰囲気であったが、居館は最近葺き替えられたらしい勾配屋根が真新しい松材の匂いを放っていた。 前庭では鶏が餌をつつき回り、子豚を追う豚番の少年の姿も見える。厩舎の横では鍛冶屋が斑〔ぶち〕の農耕馬...

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第三章(7)

第三章

2012.11.24 (Sat)

「お赦しください殿下! この者たちは無学で、高貴なかたにお目にかかったこともなく、礼儀も知りませぬ。しかも世間に疎いものですから、何やら思い違いをしている様子、それに免じて何卒〔なにとぞ〕……!」 ユディウスは若者を見下ろしたまま、「恩赦の報〔しら〕せは届いていないのか?」「……おんしゃ?」 若い農夫は顔をしかめて首をかしげた。「大公様が、戦って敗れた父上の罪をお赦しくださったのだ」 農村の識字率はほ...

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第三章(6)

第三章

2012.11.23 (Fri)

「アンドール、この者たちは何だ」 凛とした声が響いた。鞭に打たれたように、アンドールだけでなく、農民たちも声の主をふり返った。「も、申し訳ありません、殿下……! 彼らは父の領民で……このあたりで耕作をしている、村の者でございます」「農夫なのは見ればわかる。で、いったい何のために集まっているのだ?」「さあ、それが、私にも……」「……若さま」 そのとき、熊手を手にしたひとりの農夫が、そっと、アンドールの衣の裾...

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第三章(5)

第三章

2012.11.18 (Sun)

剣の林が道の真んなかに出現し、それを前に互いのあいだの緊張が、肌で感じられるほど高まった。農夫たちは熊手の鉄爪を低く構え、相手が剣を振り下ろすより先に突き出さんとする様子。騎士たちにしてみれば、農民を蹴散らすのなどわけないが、道が狭く身動きがままならぬ。 両者はにらみあった――まるでどちらかが口をひらけばいつでも飛びかからんというふうに。「お待ちくださいっ」 先頭の騎士と農民たちのあいだに馬を割り込...

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第三章(4)

第三章

2012.11.17 (Sat)

騎馬の一行が速足でなだらかな丘を越えてゆくと、葡萄畑の向こうにもうひとつ小高い丘があり、その頂上に、どっしりとした灰褐色の石造りの城館が威容を誇って現れた。 ふもとへゆくにつれ、丘は葡萄棚から、まだ青々とした小麦畑と牧草地へと変わる。灰色や茶色の縁なし帽、麦わらの帽子をかぶって働く農民の動きが、小麦の穂を、風が通っているかのようにひっきりなしに揺らしていた。「あそこに見えるのが父の館でございます」...

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