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第十一章

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 ユディウスは眼窩に短剣の突き刺さった死体を打ち捨て、重い足取りで柵の出口へ向かった。神官長が彼の勝利を――正しさを――宣言するのも耳に入らぬ様子で。
 木戸に手をかけたとき、レッジェーロが走り寄った。
「――ユディウス様! お怪我を?!」
 主の顔半分は返り血を浴びてまだらに染まっていた。
「大半は、私の血ではない……」
「ともかくもお手当てを……こちらへ」
 従者の肩を借りて戻り際、馬車の前に立ちつくすメッサリナの横を通った。彼女は駆け寄ろうとするでもなく、泣き伏せるでもなく、ドレスを両手でぎゅっと握りしめ、茫然としている。
「……これで満足か?」
 しわがれた声。メッサリナは返す言葉もなかった。
 控え室へ帰りつく前に、極度の疲労と緊張が祟り、ユディウスはこらえきれず、物陰で嘔吐した。
 レッジェーロが持ってきた水差しの水で口をゆすぎ、頭から浴び、注ぎ口からじかに飲んでようやく人心地を取り戻す。そうして、ぼんやりと――今度は本当にしばらく動けそうになかったので――神殿の壁に背をもたれて座っていた。
 レッジェーロは急いで小姓たちを呼びにゆき、彼はひとり残されていた。境内は先刻までの血生臭い騒ぎが嘘のように、さわやかな風が吹き抜けてゆく。
「おめでとうございます、わが君」
 どこからともなくナルドが現れ、うやうやしく一礼した。
「先ほどの……奴の口を封じたは、おまえか」
「さすが鋭くていらっしゃる。御意に召されぬかもとは存じましたが、大事なのは、経過ではありませぬゆえ」
「気にはせぬ――だが、この次やるときは、おまえのお節介抜きでやってみせる」
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