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第十一章

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Ⅱ.

 空位となったバロキア伯の地位に、ユディウスは、ダレッツォの母方の従姉妹〔いとこ〕の子を就〔つ〕けた。
 あたらしい伯爵とはいえ、それはまだ七歳の童蒙〔どうもう〕であったし、おまけに、騎士修行のためと称して大公の宮廷にあがらねばならなかったから、実権は大公が握っているも同然であった。
 ユディウスとしても、幼い伯の後見役たる母方の伯爵にも、口出しをさせるつもりはまったくなかった。
 成人していたダレッツォの息子は、わずかな封地を与えて辺鄙〔へんぴ〕に押し込めた――これで、名実ともに、大公の地位と権力とを一手に掌握し得たのであった。
 大国国南西部に位置するバロキアは、暑く埃っぽい気候である。大公直轄領ほどではないが金山を有しており、決して貧しい土地柄ではない――はずであった。
 実際には、金の採掘のほか主要産業といえば、沿岸漁業とオリーブの栽培で、大半の領民はそれでほそぼそと暮らしていたにすぎなかった。
 己が足でその地を訪ね、己が目で納税記録を検分したユディウスは愕然とし、また唖然とした。帳簿がおよそあてにならなかったからである。
 第一に剣を取るべく育てられた荘園領主たちはおろか、大貴族までもが金鉱脈の上に胡坐〔あぐら〕をかき、税収の基礎となるべき穀物生産高や収支報告は丼勘定ですませていたのだ。気前がよいのは美徳とはいえ、あればあるだけつかってしまい、なければないで領民から取り立てるでは、早晩、家計が火の車になるのは当然である。
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