FC2ブログ

第十一章

第十一章(11)

 ←第十一章(10) →第十一章(12)
 大小の商人たち、直轄領の農民たち、そして、若くして能力ゆえに取り立てられた小貴族たちや食い詰め者たち――のあいだでは、ユディウスの評判は上がっていった。
 が、明があれば暗があるように、面白くないのは領地を奪われた家の郎党だけではなかった。大公家に次ぐ所領と財貨の持ち主にして、いまでは大公の唯一の年上の血族となった、宰相エドラスも苦い思いを味わっていた。
 彼の当初の計画では、世間知らずの若い甥は、大伯父をただひとりの味方と頼み、内政には不干渉の立場をとるはずであった。歴代の大公の大半が内政にほとんど関心を持たず、ユディウスの父親もまたそうであったから、父大公のやりかたを踏襲するのであれば、何ら問題とはならなかったであろう。
 ガイアスが継嗣を遊学させたのは、自身に欠けている学識を身につけさせるためではなく、学問によって己が息子が柔弱な人間となることを目論んだためであった。
 それが、いまはどうだ。父大公の思惑は裏目に出、甥は生気を抜かれるどころか奸知を駆使し独断専行に及ぶようになっている! あろうことか、宰相に対してはつねに優先して与えられるはずであった謁見の権利も、ユディウスはこのところ、何やかやと理由をつけて先延ばし続けている。大公の不可解な態度に、エドラスの側からも、様子見に転じる者が増え出した。頭が痛いから会いたくないでは、まるで冷感症の妻の断り文句ではないか!
 今日こそは、寝起きの寝室に押しかけてでも、宰相たる自分をことさらに避ける次第をあきらかにせんと意気込んだ宰相に、ユディウスはようやく、会うと言ってきたのであった。
 ほかの廷臣らの前で釈明させんと、大広間、さもなければ評議場での謁見を申し出たエドラスであったが、指示されたのは大公の執務室であった。
 それならば、それでよい。まわりに余計な人間が居ないほうが、かえって、甥に対して気兼ねなく小言を言ってやれるというものだ。
 エドラスはすぐさま気持ちを切り替え、執務室の扉をくぐった。
関連記事
スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png INFORMATION
もくじ  3kaku_s_L.png 第一章
もくじ  3kaku_s_L.png 第二章
もくじ  3kaku_s_L.png 第三章
もくじ  3kaku_s_L.png 第四章
もくじ  3kaku_s_L.png 第五章
もくじ  3kaku_s_L.png 第六章
もくじ  3kaku_s_L.png 第七章
もくじ  3kaku_s_L.png 第八章
もくじ  3kaku_s_L.png 第九章
もくじ  3kaku_s_L.png 第十章
もくじ  3kaku_s_L.png 第十一章
もくじ  3kaku_s_L.png 第十二章
もくじ  3kaku_s_L.png 第十三章
もくじ  3kaku_s_L.png 第十四章
もくじ  3kaku_s_L.png 小編
もくじ  3kaku_s_L.png 設定
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
  • 【第十一章(10)】へ
  • 【第十一章(12)】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【第十一章(10)】へ
  • 【第十一章(12)】へ

INDEX ▼