FC2ブログ

第十二章

第十二章(2)

 ←第十二章はじめました。 →第十二章(3)
 皇帝はもそもそと起き出し、螺鈿細工の長持の底から麻のシャツと短い革の胴着、脚衣を取り出した。
(……皇帝の良いところは、)
 ひとりシャツの袖に腕を通しつつ、心中ひとりごちる。皇帝の更衣には蟻のようにむらがる侍従たちも、今日は手出しを控えている。
(けばけばしい道化衣装も、気違いじみた朝議も、怒声ひとつで全部なしにしてしまえることだな……)
 だが誰かを怒鳴りつけてようやく独〔ひと〕りになれるというのなら、猟師でいたほうがどれほど気が楽か!
 身支度をすませると、ウルバインは正面扉ではなく、寝台のすぐ横の壁を押した。絹地に花々の刺繍された壁に、大人ひとりがようやく通れるほどの口があく。皇帝はするりと壁のなかへ消えた。

「ウィーゼル、レヴェク、モリソン、フロティエ、それからクライン、ついてこい!」
 突然、飾り棚の横の壁から、深緑色の外套をまとった皇帝が出現したので、〈騎士の間〉に詰めていた近衛騎士たちは驚いた。なかにはあわてて、持っていた手札〔カード〕を背に隠そうとして椅子ごとひっくり返る者もおり――それもそのはず、彼らは今日は控えの役回りであり、皇帝の警護は別班がもっと身近に侍っていたからだ。
 ウルバインがそのまま、今度は表から出て行ったので、名を呼ばれた数名はサーコートをひっつかみ、急いでそのあとを追った。
関連記事
スポンサーサイト


もくじ  3kaku_s_L.png INFORMATION
もくじ  3kaku_s_L.png 第一章
もくじ  3kaku_s_L.png 第二章
もくじ  3kaku_s_L.png 第三章
もくじ  3kaku_s_L.png 第四章
もくじ  3kaku_s_L.png 第五章
もくじ  3kaku_s_L.png 第六章
もくじ  3kaku_s_L.png 第七章
もくじ  3kaku_s_L.png 第八章
もくじ  3kaku_s_L.png 第九章
もくじ  3kaku_s_L.png 第十章
もくじ  3kaku_s_L.png 第十一章
もくじ  3kaku_s_L.png 第十二章
もくじ  3kaku_s_L.png 第十三章
もくじ  3kaku_s_L.png 第十四章
もくじ  3kaku_s_L.png 小編
もくじ  3kaku_s_L.png 設定
もくじ  3kaku_s_L.png 雑記
  • 【第十二章はじめました。】へ
  • 【第十二章(3)】へ

~ Comment ~

管理者のみ表示。 | 非公開コメン卜投稿可能です。

~ Trackback ~

卜ラックバックURL


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

  • 【第十二章はじめました。】へ
  • 【第十二章(3)】へ

INDEX ▼