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第十二章

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「ほんと、うらやましいよ、リクリツィアが! だって、すくなくともキュリアからここまでは旅をしてこられたわけでしょ」
「ああ……そういえば女将が言っていたな、キュリアから来た娘がいると」
「やだ、やっぱりあんたもあの娘〔こ〕に興味があるの?」 
「そういうわけではないが」
「やめといたほうがいいよ、そりゃあ胸はあっちのほうが大きいかもしれないけどさ、生娘なんていうのは嘘だもん。もう二十人には同じこと言ってるの聞いたよ。女将が水揚げ料をふんだくろうとしてるだけ。あんたがあんまりもののわかってなさそうな、いい人そうだから言うんだけど。王様の前で踊ったことがあるなんていうのも嘘よ。あたしたちみたいな身分の人間が、王様だの皇帝陛下だのをじかに見られるわけないじゃない。それにそんなにすごいんだったら、どうして貴族のお屋敷とかじゃなくて、こんなところに流れて来たのかって話よ」
「その娘はどうやって都へやって来たんだ?」
 国名を耳にするたびに苦い思い出が呼び覚まされ、キュリアに関することになど首をつっこみたくはなかったのだが、いささかの好奇心が湧いてもいた。考えてみれば、顔も知らぬあの男の死地となった場所を、彼はほとんど知らないままだったのだ。
「あたしも詳しいことは知らない」
 商売敵を警戒するのか渋る娘だったが、それでも噂話は好きとみえ、
「あの娘〔こ〕から聞いたこととか、ここへ来るお客とかの話じゃ、キュリアでなんか大きな戦〔いくさ〕があったっていうじゃない? それで前の王様もいなくなっちゃったんだってねえ」娘はそこで小首をかしげ、
「王様がいなくなるだなんてこと、あるのかしら? それって太陽が昇らないってことと同じくらいありえないことよね」
「それからあたらしい王様がきてね。そうしたら、前みたいなきつい税のとりたてはなくなったんだけど、商売をしに来るのが帝国〔このくに〕とか南のほうの人間ばっかりでね、それも安く買い叩かれちゃうんだって。でもそいつらがけっこう羽振りがよさそうだったから、こっちにくればもっと稼げるんじゃないかって思って、隊商にくっついてここまで来たんだって」
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