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第十三章

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御幸の行列は曇天の下〔もと〕、出立した。
 見送るマリウスは随身に選ばれなかったことであきらかにほっとしていた。つね日ごろカルミアとコルドゥアンの信徒であることを公言して憚〔はばか〕らぬ彼にとってみれば、ディトゥール神殿で執り行なわれる神託授受の儀式など、かたくるしいことこのうえないものであった。
 ウルバインのほうも、面白くも何ともない、むしろ神妙な面持ちで、金糸で覆われた手綱と、胸当てに絹の房飾りをつけた連銭葦毛にうち跨っていた。
 〈霧が丘〉は小高い丘全景が灰色がかって見えた。
 これはあながちまったくの比喩ともいえぬ。天上の神を祀る神殿は、遠くバロア産の灰色の斑〔ふ〕の入った大理石で組まれていたからだ。
 巨大な霜柱を思わせる柱が天空をかたどった丸屋根を支える。丘の上にぽっかりあいた正門は昼というのに昏〔くら〕い。
 ふもとの参道から幅広の大理石で敷かれた階段を皇帝は馬で駆け上った。
 中腹まできたところで、ちょうど神殿の影が落ちるあたりに妙な集団のいるのが目に留まった。
 老若男女様々であるが、肌の日焼けぐあい、髪の乱れかたからみてそのほとんどが農民のようだ。
農民が雨乞いに〈霧が丘〉へ来るのはべつだんめずらしいことではない。が、風変わりなのは、三十人ほどいるその一団が皆、麻袋に似た白い貫頭衣をまとい、裸足にサンダル履きという揃いの格好であったことだ。
 いまどき巡礼ですらそのようなみすぼらしいなりで〈霧が丘〉には詣でない。そればかりか彼らは皇帝の姿をみとめるや、杖を手にした老人は杖を、若者はこぶしをふりあげ、
「雷帝はお怒りだ!」「いかずちに撃たれるがいい!」「このばちあたりめが!」と口々に叫び出した。
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