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第十三章

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(このようなとき、アストリッド女神なら、何か良い智恵を授けてはくれぬだろうか――)
 マリウスにも、ガラテアにも、相談しようものなら反対されることは目に見えている。否、相談すら無益だ。父皇帝でさえ抗い得なかったほど、〈霧が丘〉の権威は絶対であった。
かといってこの損な役回りを、ほかの騎士に命じて己は口を拭ってすますことはできぬ――
(こんなことなら、おまえは皇帝にふさわしくないから退位しろ、と言ってくれたほうがずっとましだったな)
 それこそ彼の望んでいたことだったのだが。
「――陛下!」
 控えの間に戻ると近衛騎士が飛んできた。よほどの渋っ面でいたのだろう、相手は皇帝が怒っていると思ったらしく、いつになくまごついている。
「帰るぞ」
「――へ、陛下、外はまだあいにくの雨で――」
 濡れるのが嫌ならついてこなくてもいいとばかりに、ウルバインは身ひとつで神殿をあとにした。
 外はからみつくようなしっとりした粉糠雨で、雷帝の御機嫌はうかがえぬ。
「陛下、お風邪を召します――これを」
 たちまちのうちに追いついた近衛騎士の差し出す蝋引きの外套も断り、ウルバインは雨にけむる帝都の城壁目指して馬を駆けさせた。
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