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第十三章

第十三章(20)

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一の郭へ帰りつくや否や、皇帝は私室にこもった。
「〈霧が丘〉の大僧正にお叱りでも受けたのでしょうかねえ?」
「そうではない。これを見よ」
 マリウスの言に、グラシャスが皇帝のあとを追って届けられた書状をひろげる。マリウスは興をさかしたように片眉をあげたが、何も口にしなかった。
 神託を見せられたガラテアも眉をひそめた――が、討伐部隊の編成について宰相に尋ねられても、「陛下の御下命あらばいつでも」と答えるにとどめたのであった。
「胸糞悪い命令だ」
 時期はずれの寒さに火の入った暖炉の前で、ウルバインは吐き捨てた。
「命令ではなくて神託でしょう」
 マリウスは蜜入りの赤葡萄酒を啜った。
 皇帝はブーツのまま、上衣〔うわぎ〕もなしにリンネルのシャツと脚衣という格好で、暖炉の前に胡坐〔あぐら〕をかいて座り、十分に炎〔ほむら〕をあげている薪を火掻き棒で掻き回していた。
「余計たちが悪い。命令なら抗命もできるが、お告げではな……。一体、己が親父殿に何を誓って騎士になったと思っているんだ? 誠実で勇敢、豪胆であれ、敵を恐れさせ、婦人と幼子を護り、貧者に与えよ――」
「それと、聖職者を敬え、でしたっけ」
「……おまえは、丸腰の坊主どもをどうにかするのに賛成なのか?」
「まさか。あなたがお忘れのようなので、思い出すのをお手伝いしただけですよ」
「〈霧が丘〉の連中も、どうにかしたいのなら自分たちの神官騎士をつかえばいいだろう」
 皇帝は唾を――行儀の悪いこと甚だしい――暖炉に吐いた。じゅっと音があがる。
「それでは仮にもディトゥール神殿の内部抗争になってしまいますからね。あちらとしては自分たちの命令――おっと神託、に、陛下が従う、というのが重要なのですよ」
「……だから己は皇帝冠など要〔い〕らんと言ったんだ」
「お父君なら――きっといやいやゆかれたと思いますよ」マリウスはなぐさめるように言った。「北の堅物なら、神託を戴いたその足で討伐に向かわれるでしょうし、南のお馬鹿さんなら嬉々として向かうでしょうね。だから、私はあなたでよかったと思っているのですよ」
「だができることなら穏便にすませたい……たとえ神意に――多少は――そむくことになっても」
「ガラテア様が手を尽くしていらっしゃいますよ」だが、その先は続かなかった。
 ここまで話の大ごとになる前に、黒衣の軍師長は手の者をつかい、首謀と目される破戒僧への接触懐柔をこころみていた。が、成果はあまりはかばかしくなかった。農民や行商人を装って近づいてみても、彼らの前に現れるのは首領より格下と思われる者ばかり。最初〔はじめ〕表に立っていたご本尊はいつの間にか大事に奥へしまいこまれ隠されてしまっているかのようだった。
 それきり、皇帝は黙った。火掻き棒で暖炉を掻きまわすのもやめ、まるで一個の彫像と化してしまったかのように、橙色の炎を見つめている。その深い海の底を思わせる黒曜石の瞳に火光〔かぎろい〕の踊るのを、マリウスも黙って見守っていた。
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