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第十三章

第十三章(21)

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夜半、帝都住民の三分の二は寝台から叩き起こされた。生木を裂くようなばりばりという音のあと、巨人の軍団が進軍太鼓を打ち鳴らしたかのような轟音に鼓膜を破られたのだ。
 後宮ではウルバインが夜着裸足のまま露台〔バルコニー〕へ走り出、真っ赤に染まった西の空に目を遣った。
「陛下、大事〔だいじ〕はございませんか?!」
 夜伽の小姓と近衛騎士が走り寄る。
「あれは三の郭……西区のほうだな」
 夜着を脱ぎ軽装へ更衣しているところへ、
「申し上げます。先刻の大音と衝撃は、西区二の郭〈六花の門〉への落雷でございました。補修工事用の足場に落ちましたため足場が崩れ、木材に引火。周辺では火災が発生しておりますが、護民兵が消火にあたっております。一の郭まで被害の及ぶことはないとの由、何卒陛下には御心安らかに……」
 控えの間で口達する急使の声。ウルバインは眉間にしわを寄せた。
「雷帝〔ディトゥール〕も……落とすなら宮廷〔ここ〕へ落とせばよいものを」
 一の郭はひと安心と聞いて、ふたたび夜着に着替えさせようとする小姓の手をふり払う。
 控えの間へ入ってゆくと、いましも同じ報告を持ってあがろうとしていた執政官と鉢合わせし、相手はその場に棒立ちとなった。
「火事の様子は? ひどいのか」
「ただいま調べさせております。が、宮廷への延焼のおそれはございませぬ。陛下にはどうぞこのまま安んじてお寝〔よ〕りあそばしますよう――」
 ウルバインはそのまま廊下へ出てゆきかけ、扉の直前でぴたりと足を止めた。
「このことは――グラシャスと――マリウスには?」
「宰相閣下とランドローヴァル侯爵閣下にも、むろん、お伝えしてございます。宰相閣下は夜の明け次第参内されるとのこと。侯爵閣下は――その――宮殿内にはおいでなのですが……」
「明日の朝一番に」ウルバインはマリウスの居所など聞いてはいなかった。「エヴァンを喚〔よ〕んでほしい」
「エヴァン近衛騎士団長閣下を。かしこまりました。お急ぎのご用でございましたらいますぐにお呼びいたしますが」
「明日の朝でいい」
「かしこまりました。ほかに御用は」
「金輪際、己を寝かしつけようとするな」
 言うなり、くるりと踵〔きびす〕をかえし、呆気にとられる小姓たちを追い出し、寝室の扉を閉めてしまった。
 折悪しく、北東から吹きかえる風が火の粉を散らした。
 この時代、帝国随一の都といえども、家屋の大半は木造である。ことに三の郭では、家と家のあいだが猫一匹とおるのもやっとという狭さで、防火設備など夢のまた夢というありさまであるうえに、ひとつの家に住んでいるのは四家族というのもめずらしくなかった。途中で降り出した雨でさえ、どれほどの役に立ったことか。
 男たちが下穿き一枚で井戸の水汲みに走り、女たちがあわててひっかけた寝巻姿で、くすぶるごみの山を前掛けではたき消しても、炎の舌は彼らのなけなしの財産をきれいさっぱり舐め取っていった。
 燃えるものが燃え尽きてしまうとようやく火はおさまったが、
「あああ……赤ちゃん……あたしの赤ちゃんが……」
 水びたしの道の真んなかで泣き崩れる女がいるかと思えば、
「俺は見た――俺は見たぞ、この目ではっきりと見た! 烏〔カラス〕が燃える枝をくわえて飛んできて、火をつけて回るのを! あれは神の遣いに違いない! 俺たちを罰しに来たんだ! ……」
 消火や避難のために足早にゆきかう人々を誰彼となくつかまえてはがなり立てる者あり。西区の喧騒は夜の白むまで絶えることはなかった。
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