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第十三章

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遠雷が聞こえた。
「確実にひと雨くるな」
 ウルバインの乗馬が耳をぴんと立てた。
「心配するな、まだ遠い」
 頸〔くび〕を叩いてやる。
「どうも落ちつきませんな。先日の件があったためでしょうか、馬たちも常よりは昂ぶっておるようで――や、おかしいですな」
 近衛騎士は前方に目を遣〔や〕った。
「どうした」ウルバインも馬をゆるめる。
 剣戟にも怒号にも怖気づかぬよう訓練された軍馬が、険路の入り口近くで勝手に足をとめ、しきりに足踏みし、先へゆくのを尻ごみする様子をみせているのだ。
「狼でも出たのか」
「いいえ、陛下――ですが、臭いでも嗅ぎつけたのかも知れませぬ。なにしろこう霧が深くては……」
 彼らは乳色のもやのむこうに目を凝らした。が、森妖精の血をもってしても、白いヴェールを透かして見ることはかなわぬ。
 ふたたび、ごろごろいう音。
「少々気が立っているのかもしれん。どれ、己が先に行くか」
「それは、どうかお控えください、陛下」
 先の見とおせぬところへ皇帝を立たせて、何かあってはそれこそ一大事である。
「ではさっさと行〔ゆ〕かんか」隊長のひと声で、先導の四名の騎士は馬に強く拍車をかけた。四頭はいやいやをするように首をふったが、あきらめたように駆け出した。
 ウルバインもそれにつづく。
 そうしてほぼ全員が、踊り場めいた隘路へ馬を乗り入れた直後〔すぐあと〕、後方で叫びがあがった。
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