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第十三章

第十三章(29)

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おそろしいほどの静寂がおとずれた。
 山路には湿った土と岩、裂けた木とちぎれた枝がうず高く積もり、動くものといえば――土砂のあいだから突き出た馬の脚が弱々しく空を掻いたが、やがて動かなくなった。
 くっきり段を描いていた、道と山肌との境は崩れ去り、腐葉土が何もかもを呑み込んで、崖下に黒々とした幅広の帯となっている。
 切れぎれの霧のあいだに、おぼろに人馬の影があらわれた。どの顔も泥にまみれ、真白いサーコートはもはやその色をとどめてはいない。
 幽鬼のようによろよろと戻ってきた八人は、あとに築かれた小山に言葉を喪〔うしな〕った。
 そこへ飛来したカケスのけたたましい鳴き声が彼らの目を覚まさせた。
 霧が晴れ、森に一気に光と音が戻ってきた。
「……そうだ、こうしてはおられん」
「陛下を――」
 せめて陛下だけでもと、残された近衛騎士たちは泥の海を掻き分けはじめた。
「レヴェク、と、ガランス、狩小屋へ先に救援を求めて来い」
 使える手は十二に減った。
 二刻〔約四時間〕も掘りかえしただろうか。流れる汗と泥のために彼らの目は真っ赤になり、革手袋の指先は破〔や〕れた。真っ二つになった幹や岩を崖下へ放り投げるたび、ふだんの鍛錬とは違う肩や背の筋肉がひりひり痛んだ。
 ようやく、茶色い泥のあいだから、かすかに青紫色の布切れを見つけたとき、日は西にかたむき、木立のすきまからちらちらと光を投げかけてくるのみとなっていた。
 樫の大枝と岩のつくるわずかなすきまに、もうひとりの近衛騎士と折り重なるようにして皇帝は見出された。
 飛んできた木石に頭を割られた騎士のほうはすでにこときれていたが、彼がもろともに馬から撥ね落とした主君のほうにはまだ息があった。
「神の御加護だ……!」誰からともなくつぶやきが漏れた。
 しかし皇帝は騎士たちの呼びかけには応じなかった。きつく目を瞑〔つむ〕ったまま、深い呼吸をくりかえすのみである。
 馬の背に乗せるのはできぬ相談と思われた。外套と木の枝でこしらえた即席の担架に横たえられた皇帝は、一様に泥にまみれ疲れきった顔つきの六人の男たちによって、山道をのろのろと運ばれていった。
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