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小編

小編〔過去編〕(10)

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「それに、自分で勝手に薪をくべることもありますしね。かの人の微笑み、一瞥、近しく口をきけること……そんなものでますます燃え盛ってしまうのです。たとえそれが勘違いで、己に向けられたものでなかったとしてもです」
「そんなふうにみんなして莫迦〔ばか〕になってしまったら、世は大混乱でしょうに」
「それがよくできたところでしてね、偉い人の結婚は若いうちにみな親や親戚連中が決めてしまうんです。恋愛なんてばかなまねをしないようにとね」
「それはあまり……愉快なやりかたではありませんわね」
「そうでしょう。俺の知っているある男なんかは、生まれたときから結婚相手が決まっているって寸法です。これから生まれるはずの娘が、ね」
「あなたたちは生まれてすぐ婚姻の誓いを立てるのですか?」
「いや、さすがにそれはまれな例ですよ。ふつうは娘が十三から、男が二十五くらい……男女の年齢がつりあっていればね。なかには十四の娘が四十も年上の男に嫁ぐこともあるくらいですから」
「あなたがたの成人の年齢がどのくらいかはわかりませんが……とても信じられません。あなたの言うように、あなたがたのあいだでは年月が分別と結びついておらず、十四の娘が五十四歳の相手と婚姻の契りを結ぶというのなら、あなたがたは、女のほうが男よりもよけいにかしこいということになりはしませんか」
「ときにはそう思うこともありますがね」エヴァラードはおどけて言った。
「誰と契りを結ぶかは、わたくしたちはみずから選びます。己の上に起こることを、なぜほかの者に委ねなければならぬのです?」
「まったくそのとおりです」彼はわが意を得たりと力強くうなずいた。「幸いにして、と言うべきかあるいは悲しいことにと言うべきか、俺にはまだ決められたお相手がおりませんのでね」
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