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小編

小編〔過去編〕(12)

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木立の陰のなかからゆっくりと姿を現したのは、もうひとりのエルフであった。
 雉の尾羽飾りを挿した緑の帽子をななめにかぶり、その細身の体にぴったりした襟の高いなめし革の胴着と脚衣、それに膝まである長靴――どこから見ても狩人のいでたちだが、栗皮色の胴着には金糸で柏葉が刺繍され、同じ文様が手に持った弓と箙〔えびら〕にも刻まれているのをみると、森の貴公子のひとりであることは疑いようがなかった。
〈変わりないね、イレーン〉
 彼は右手に下げていた皮袋を差し上げた。
〈これをきみに。――ところであの人間は何だ?〉
「ご紹介しますわ、わたくしのお客さまですの」エヴァラードにも聞こえるよう、共通語へ切り替える。
「エヴァラード、こちらはアリオン。わたくしの母方の曾祖母〔ひいおばあさま〕の姉の孫ですの」
(つまり、めちゃくちゃ遠いがかの女と血のつながった親戚ということか)
「アリオン、こちらはエヴァラード」
 エヴァラードは握手をするために右手を差し出したが、アリオンと呼ばれたエルフは優雅に一礼した。かるく腰をかがめると、編んだ鬢〔びん〕のひと房が肩口に流れ落ちた。
〈なぜここに?〉
「森で迷って倒れていたのをお連れしたのです」
 高貴な狩人は人間の騎士を、馬でも競〔せ〕っているかのようにじろじろと、夜のように黒い髪から筋張った太腿、日に焼けた肌に剃り残した髯の一本一本に至るまで眺め、
「その風貌だと〈帝国〉北西部の生まれだな?」
 今度は帝国公用語で訊〔き〕いた。
「そうです」
 エヴァラードはいささかの驚きを表情〔かお〕に出した。
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