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小編

小編〔過去編〕(13)

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「そのような人間がなぜ南へ? 見たところ、羊飼いでも農夫でもなさそうだが」
「遍歴騎士です」
「なるほど。戦うのが生業〔しごと〕か」
「…………」
「それで、その騎士が何故この森へ? 戦〔いくさ〕の臭いはせぬはずだが」
「……リーンサルの――ユードへ行くために森を抜けようとしたのですよ。地元の村人は抜けられないと言ったが、実際そのとおりだった。それで、三日三晩彷徨ったあげく、かの女に助けられた」
「なんのお話をなさっているの? ――アリオン、あなたがエヴァラードと同じ言葉を話せるだなんて知りませんでしたわ」
「簡単なことだよ、イレーン。聞いていればおぼえる」
 かの女に向けるのは、打って変わってやさしい声音と微笑み。
(……くそ、こいつのいるところではうかうか屁もできんというわけか)
「エヴァラード、アリオンは以前〔むかし〕、人のあいだにまじっていたことがありますの。いろいろと思い出話もできると思いますわ。それに、鹿を持ってきて下さったの。わたくしには十分な量ですから、三人で夕食にいたしましょう――アリオン、来て下さったのがあなたで本当によかった」
(……どうだかね)
 エヴァラードはうっかり心中を口にせぬよう、用心しいしいひとりごちる。恋する者特有のするどさで、彼は目の前に現われた第三の男が、単なる種族間の偏見を超えた感情〔もの〕を抱いているのを嗅ぎとっていた。
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