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第十三章

小編〔過去編〕(30)

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「俺は――」エヴァラードはイレーンに向き合い、その手をとった。「死ぬまできみがそばにいれくれるのなら、それ以上は何も望みはしないし、きみの望むことは何でも誓おう」
「三つあります」
理知的な蒼い瞳を持つ森妖精の娘は言った。
「ひとつは、鉄でつくられたものでわたくしに触れず、またわたくしに触れさせないでください。もしそうなされば、わたくしは永遠にあなたの許〔もと〕を去らねばなりません」
「決して」
「ふたつめは、わたくしの為すことを以って、わたくしの一族を貶めるようなことは口になさらないでください。もしそうなされば、一族はあげてあなたの敵となるでしょう」
「誓おう」
「三つめは、けしてわたくしに嘘をつかないでください」
「決してしないと誓う」
「すんだかね?」
 大陸共通語のわからぬらしい僧侶が聞いた。
「ああ」
「ではこれでふたりはめでたく夫婦だ! すべての地を這うものの母にしてあらゆるみどりと果実をもたらす慈愛深きわれらが女神アルマトゥーラに万遍の感謝を!」
 地母神の僧侶はそうして大仰に祈りを捧げたあと、不思議そうに首をめぐらし、立っているふたりを眺めまわした。
「なにぼさっとしとるんだね、ほれ、誓いのキスは?」
 エヴァラードは苦笑しつつ、イレーンのフードを少しだけ持ち上げ――ほんものの女神と見紛う姿を目にしては、地母神の坊主はきっと腰を抜かしてしまうだろうから――その唇に、小鳥のようなキスをした。
 それだけでも坊主のほうは大喜びで、めでたいめでたいと丸っこい手を何度も打ち合わせたのであった。
「これはお礼だ、とっておいてくれ」
 エヴァラードが差し出したのは金の指輪であった。親指の爪ほどの大きさの黒曜石に、金色の獅子が三頭象嵌されている。
「ありがたく頂戴しよう。大地の子らに、女神のお恵みがあるように」
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